cooskunのブログ

文房具業界で10年働いてきました。10年前は勢いがありましたが、ここ最近の業界は元気がなく成熟期に入ったとも言えますが少しでも盛り上げていけたらいいなと思いこのブログを立ち上げました。色々な商品を紹介出来たらいいと思いますし、その商品が読んでくださった方の生活が商品を通じて豊かになったらいいなと思ってます。

スマッシュ

「スマッシュ」が誕生したのは1986年。現在も発売されている製図用シャープペン「グラフ1000」の一般向けとして登場したという。価格は当時から1本1,000円(税抜)。一般向けで1,000円という価格は、今でも高級シャープペンの部類に入るが、当時はもっと高級なイメージだったのではないだろうか。

漆黒のボディに赤くロゴを入れたデザインは非常に格好良く、当時から男子たちのあこがれのシャープペンになったのは想像できるが、それ以上にこのシャープペン開発での数々のこだわりが少年たちの心をつかんだのだろう。

肝心のメカの部分は、プロ仕様の「グラフ1000」と同じ金属チャックを採用しているが、それ以上に「スマッシュ」ならではの独自仕様を採用したのだという。

まずは、先端の口金とグリップ部を一体化させたロングパーツを採用したこと。通常は別々のパーツになっているが、これを一体化させることで筆記の安定化が得られる。この加工は大変で、非常に難易度が高いそうだ。ここのグリップはボコボコしていて握りやすそうだが、マットな質感の金属グリップで、しかも塗装は3層塗りを施しているというのだから、そのこだわりの強さに感心してしまう。

口金とグリップを一体化させたパーツ

そして、ノック部にはジャバラのパーツを使用。文具に詳しい人ならば、ラミー「サファリ」の油性ボールペンのノックと同じようなパーツと言えば分かるだろうか。ここも非常に凝った意匠だ。さらに、芯硬度を表示する窓まで付けている。

 

芯硬度の表示窓(左)とジャバラノック

「今の時代ならば絶対に認められないくらい、凝った仕様になっています」と同社商品開発本部シャープ企画開発部丸山茂樹部長は言う。

聞くところによると、この「スマッシュ」を開発したのは、1986年当時まだ20代だった若手社員。対する「グラフ1000」の開発者はベテランで、そのベテランに挑む気概を持って開発したそうだ。このシャープペンが持つ、どこかトガった雰囲気は、そんな開発者の当時の心境によるものなのかもしれない。
10万回のノック試験に耐えるタフさが人気の理由です。
発売当初から話題を呼び、当時は0.3㎜、0.5㎜、0.7㎜の3種類のシャープペンに加え、同デザインのボールペンもラインアップしていたが、人気のピークを過ぎたこともあり、0.5㎜を残して今は廃番となった。そんな冬の時代を乗り切った後に訪れたのが、製図用シャープペンのブーム。プロが使用している製図用シャープペンのクールなデザインと丈夫なボディが、ネット上の口コミで人気となり、製図用シャープペンを一般向けにした「スマッシュ」が脚光を浴びるようになってきたのだ。

そして、完全復活を遂げたのは、Amazonの年間ランキングで文具部門1位に輝いた2013年のこと。そこから人気ユーチューバ-に取り上げられてさらにブレイクし、文具店の店頭にも「スマッシュ」を買い求める男子たちが殺到する事態となったという。

今は、「折れない」とか「細く書ける」といった最新機能を持ったシャープペンが人気となっているが、その中にあって今もなお「スマッシュ」があたかも“神シャープ”のように男子たちから崇められているというのは面白い。

 

「『スマッシュ』を開発した当時は、10万回のノック試験に耐えうるのが一つの基準となっていました。今もなお当時と同じ設計を踏襲しているので、その丈夫なところが支持されているのではないでしょうか」。

 

ロフトや東急ハンズをはじめ、様々な限定カラーのアイテムも続々登場しているという。その一方で、廃番となった0.3㎜と0.7㎜の復活を望む声もあがっているそうで、ひょっとしたら今後復活することもあるかもしれない。「スマッシュ」の勢いはまだまだ続きそう?